「足りない」と「足らない」は意味に違いはなく、どちらを使っても誤りではないが、「足りない」の方が現代語的で、「足らない」の方が古語的な表現となる。
そのような違いがあるのは、元になっている言葉が違うためである。
「足りない」は、「足りる」を否定形にした言葉。
「足らない」は、「足る」を否定形にした言葉である。
「足る」は古くから使われている言葉で、「足りる」は江戸時代以降に一般的になった言葉であるため、「足らない」よりも「足りない」の方が新しい言い方になる。
なお、「足る」が一般的であった時代の否定形は、「足らず」や「足らぬ」なので、「足らない」も新しい言い方ではある。
「足りる」は「足る」が変化した言葉であるように、「借りる」は「借る」、「飽きる」は「飽く」と言っていた。
しかし、「借りない」を「借らない」、「飽きない」を「飽かない」とは、あまり言わないことを踏まえると、今以上に「足らない」の使用が減り、「足りない」のみ使うようになる可能性もある。