遵守も順守も「じゅんしゅ」と読み、法律や道徳・決まりなどに従い、それを守ることを意味し、「法令遵守」「法令順守」の形で多く使われる。
一般には「遵守」と「順守」のどちらを使っても間違いではなく、「遵」も「順」も常用漢字である。
しかし、公用文や教科書では「遵守」と表記し、新聞やテレビでは「順守」の表記が使われている。
これには次のような理由がある。
元々の表記は「遵守」であったが、昭和29年3月15日の国語審議会の「当用漢字表審議報告」の中で、当用漢字表から削除する字として「且」「但」「又」など28字が候補として挙げられ、その中に「遵」の字が含まれていた。
この当用漢字補正資料に基づいて、日本新聞協会では「遵」の代用として「順」の字を使うようになり、「順守」と表記するようになった。
しかし、この削除案は案のままで終わり、昭和56年に当用漢字表が廃止され、常用漢字表となった際にも「遵」の字は残っていた。
新聞協会では、国語審議会から常用漢字が告示されるまでの25年以上、代用として「順守」を採用していた経緯もあって、継続して「順守」を採用することにした。
当用漢字補正資料の削除案は案であり、当用漢字表から「遵」の字が削除されたわけではなかったため、公用文や教科書では「遵守」が使い続けられていた。
このようなことから、公用文や教科書では「遵守」、新聞やテレビでは「順守」と表記が分かれるようになったのである。
法律に従って背かないという意味の「じゅんぽう」にも、「遵法」と「順法」の二通りの表記があり、「遵守」「順守」と同じ理由で、公用文や教科書では「遵法」、新聞やテレビでは「順法」が使われている。