夫婦のうち、女性の方を表す言葉には、妻・嫁・奥さん・女房・家内・かみさんなど多くあるが、婚姻制度上、婚姻関係にある女性は「妻」であり、書類の続柄にも「妻」が使われるように、夫が配偶者のことをいう最も一般的な呼称は「妻」である。
ちなみに、婚姻制度が生まれる以前から、生活を共にする女性は「妻」と呼んでおり、古くからある言葉だが、明治以前は「妻」を「さい」と呼ぶ方が多く、「つま」という呼び方は比較的新しい。
嫁は、息子の配偶者。夫の親が嫁いできた女性をいう呼称。
しかし、結婚したばかりの女性や、結婚した相手の女性(妻)を表す言葉としても、古くから使われており、あまり好ましくはないが、妻を「嫁」と呼ぶことは、必ずしも間違いというわけではない。
ただし、「夫」の対義語としては「妻」が正しく、「嫁」は「婿」の対義語になる。
奥さんは、他人の妻に対して敬っていう「奥様」のくだけた言い方で、軽い敬意含む呼称。
他人の妻に対する敬称なので、「うちの奥さん」などと、自分の妻のことをいうのは間違いである。
妻に対する尊敬語がなかったため、「奥さん」や「奥様」を使うことは正しいといわれることもあるが、自分の妻のことを他人にいう際、敬称を用いることはない。
女房は、同等や親しい間柄の相手に自分の妻のことをいう場合や、親しい人の配偶者を話題にする場合に用いる呼称である。
親しい人であっても、それが話し相手の場合には用いず、会話に入っていない第三者の場合に限る。
また、相手が目上の場合には、自分の妻を「女房」とは言わない。
女房は、元々、宮中で使用人の女性の部屋を表した。
そこから、使用人の女性を呼ぶようになり、自分の妻のことを表すようになった言葉で、「世話人」というニュアンスを含むため、現代においては好まれない呼称である。
家内は、目上の相手や、それほど親しくない相手に対して、ややへりくだって自分の妻をいう言葉。
家内には「家の中にいる人」の意味があるため、男性は家の外で働き、女性は専業主婦が当たり前の時代には使えたが、現代ではあまり適さない。
かみさんは、自分の妻や他人の妻を呼ぶ言葉。
ややくだけた言い方になるため、話し相手が親しい間柄の場合には使えるが、目上の相手には使えない。
元々は、目上の人を表す「上様」が変化した言葉で、商人・職人の妻や、女主人を「おかみさん」と呼び、「お」を除いて「かみさん」と呼ぶようになったものである。
そのため、かみさんは「かかあ天下」「尻に敷かれている」ということを匂わせる表現になるが、実際はそれをネタのように言っている場合が多い。