「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」


ニュースなどの報道では、警察から犯罪の疑いをかけられた人を「容疑者」という。
これを司法手続きや法令用語では「被疑者」といい、警察などの公的機関では「容疑者」と呼ばず「被疑者」と呼ぶ。
逮捕されていなくても嫌疑を受けた時点で「被疑者」となるが、指名手配を除き、逮捕されていない段階でマスコミが「容疑者」と呼ぶことは少ない。

テレビや新聞で「容疑者」という呼称が使われ始めたのは1989年以降で、それ以前は被疑者を実名で呼び捨てにすることが多かった。
呼び捨てにすることは犯人扱いしているのに等しいという考えから、「◯◯容疑者」と名前の後に「容疑者」を付けるようになったのである。
マスコミが法令用語の「被疑者」ではなく「容疑者」を使う理由は、「被疑者」と「被害者」の発音が似ており、間違いを避けるためといわれる。

法令用語では「被疑者」、マスコミ用語では「容疑者」という区別も、実は正しくない。
基本的に法令上は「被疑者」を用いるが、出入国管理及び難民認定法違反の疑いで調査される外国人を指す際は、「容疑者」の呼称が用いられる。

「被疑者(容疑者)」と呼ばれるのは、嫌疑を受け、逮捕され、取り調べを受けている間で、犯罪の嫌疑が十分であるとして、検察から刑事訴訟で起訴された段階で「被告人」となる。
マスコミでは「被告人」を「被告」と呼ぶこともあるが、「被告」は民事訴訟や行政事件訴訟で訴えられた者のことで、刑事訴訟では「被告人」である。

犯人は、罪を犯した犯罪者のこと。
被疑者(容疑者)や被告人の段階では、有罪が確定していないため犯人ではない。
しかし、呼び捨てにしなくなったものの、マスコミの報道では「容疑者=犯人」のような扱いをしているため、無罪判決が下った被告人が社会的な不利益を被ることもある。

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