「悲しい」と「哀しい」


悲しいと哀しいに明確な使い分けはないが、公用文などでは「悲しい」と表記し、「哀しい」は用いられない。
悲しいは、常用漢字に登録されており、「かなしい」と読む。
一方、哀しいの「哀」は常用漢字に登録されているものの、常用漢字表外音訓で「かなしい」という読みでは登録されておらず、公用文では「かなしい」に「哀しい」を使うことができない。

一般に使われる表現の違いとしては、「哀」の字を使った語に「哀れ」や「哀愁」などがあり、その印象から、「かわいそう」「寂しい」といった意味の「かなしい」を表現したり、詩的な表現・主観的な心情を表現する際に、「哀しい」が多く用いられる。

漢字の成り立ちから見ると、悲の「非」は羽が左右反対に開いた形から割れるという意味を表し、悲しいは「非+心」で、心・胸が裂けるような切ない感じを表す。
哀は「口+衣」で、思いを胸中に抑え、衣で口を隠してむせぶことを表しており、悲しいよりも哀しいの方が、心の中に思いを閉じ込め、胸がつまるようなかなしい心情を表現でき、より詩的で主観的である。

かなしいの漢字には、「悲しい」と「哀しい」のほかに、「愛しい」がある。
古くは、「いとしい」「かわいい」「切ない」「残念である」「悔しい」など、かなしいは激しく心が揺さぶれるさまを広く表す言葉であったため、「いとしい」「かわいい」といった意味では「愛しい」と表記された。

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