聞くと聴くは、意識の違いによって使い分けられる。
聞くは、「物音を聞く」「話し声が聞こえる」のように、音や声などを自然に耳に入ってくること。
聴くは、「音楽を聴く」「講義を聴く」「国民の声を聴く」のように、積極的に耳を傾けることを表す。
「聞き耳を立てる」や「聞き惚れる」など複合語の場合は、積極的であっても「聞く」を使うのが一般的である。
「きこえる」は、音や声を自然と耳に感じるものなので、普通は「聞こえる」と書くが、音楽や歌声が自然と耳に入り、その世界に引き込まれることを表す場合は、「聴こえる」と書くこともある。
訊くは、「道を訊く」「都合を訊く」のように、尋ねる、問うことを意味する。
ただし、「訊く」を「きく」と読むのは、常用漢字表にない読み方であるため、公用文では一般的な「聞く」が使われる。
尋ねることを表すため、「訊かれる」ことはあっても「訊こえる」ことはない。
聞くには、「言いつけを聞く」「忠告を聞く」のように、従う、受け入れるという意味もある。
「国民の声を聴く」であれば、国民の意見に耳を傾けることを表すが、「国民の声を聞く」では、国民の意見に従うことになる。
この場合は、「聴く」を使った方が正しい表現となるが、複合語には「聞く」が使われるなど、最も一般的な表記が「聞く」であるため、完全な誤りとは言い切れない。
その他、「香を聞く」「酒を聞く」のように、匂いや味の良し悪しを感じ取り、識別する意味でも「聞く」は使われ、「利く」とも書く。
酒の良し悪しを鑑定する「ききざけ」は、「聞き酒」と表記することもあるが、一般的には「利き酒」と書かれる。