「さける」と「よける」


「避ける」には、「さける」と「よける」の読み方がある。
「さける」も「よける」も、好ましくない対象と関わったり接触したりしないよう離れて位置することをいう。
両語とも使える場合もあるが、一方しか使えない場合もある。

離れよう、差し控えようという、意識の部分に重点が置かれる場合や、対象物が抽象的な場合は、「さける」を用いる。
「彼は私をさけている」「人目をさけて暮らす」「渋滞をさける」などは、「よける」に置き換えることはできない。

身をかわす、脇へ寄るなど、対象物との物理的な接触を回避するための動作に重点が置かれる場合は、「よける」を用いる。
「刀をよける」「落石をよける」などは、「さける」に置き換えることはできない。

さけるは「意識」、よけるは「動作」に重点が置かれるため、「車をさける(よける)」「水たまりをさける(よける)」のように、対象物が具体的で両方の語が使える場面でも、ニュアンスには違いが出てくる。
「車をさける」といった場合は、対象物(止まっている車など)の存在をあらかじめ知っていて、接触しないようにしている印象が強い。
「車をよける」といった場合は、対象物(走ってくる車など)を瞬間的に判断して接触を回避している姿や、脇へ寄ったり身をかわすなどの動作を表している印象が強くなる。

よけるには「別にしておく」「除外する」という意味もあり、この場合は「除ける」と書くのが一般的である。
さけるにはこの意味がないため、「嫌いな食べ物を皿の隅へよける」や「不良品をよける」を、「さける」に置き換えることはできない。
「不良品をさける」という表現が使われない訳ではないが、その場合は「別にしておく」「除外する」という意味ではなく、「回避する」という意味になる。

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